幸いにも良性腫瘍の頻度が高いです。 特にほくろ(母斑)がよく見られます。 ものもらい(麦粒腫)と呼ばれるものは,腫れてはいますが腫瘍ではなく、細菌感染による炎症性の腫脹で、痛みや赤味を伴います。抗生剤の内服や点眼、場合により切開して排膿することにより治ります。 霰粒腫(さんりょうしゅ)と呼ばれるものは、特に腫瘍と間違えられやすく、眼科医でも診断を誤ることがあります。主としてマイボーム腺と呼ばれる涙の蒸発を防ぐために脂肪を分泌する腺の慢性の炎症です。 腫れは有りますが、押しても痛みは有りませんので、炎症らしくなく腫瘍と間違われる事が多いのです。切開して粥状になった中身を掻き出します。50歳以上の方にこのような腫脹が生じた場合は、念のため病理組織検査に取り出した内容物を提出すると、悪性の腫瘍を見逃す危険を避けられます。中高年では、まぶたの皮膚の部分から脂漏性角化症や角化棘細胞腫(ケラトアカントーマ)等が生じます。これらは病変部を切除する事で治癒します。
悪性腫瘍は、いずれも中高年以上に生じやすく、子供や若者には希です。 日本では基底細胞癌(基底細胞腫)、脂腺癌、扁平上皮癌の順で頻度が高いようです。基底細胞癌は基底細胞腫と呼ばれる場合も有るほど転移する事は希ですが、周囲に浸潤性に増殖して、頭蓋骨や副鼻腔と呼ばれる鼻の領域まで浸潤し、出血や呼吸困難等で死亡します。眼瞼皮膚から出来る潰瘍を伴った黒色の部分もある隆起性病変です。
脂腺癌は涙の蒸発を防ぐ目的で脂肪を分泌するマイボーム腺やツァイス腺から発生します。 悪性度は他の眼瞼癌より高く、しばしば所属リンパ節である耳前リンパ節や下顎リンパ節に転移します。霰粒腫と間違われることもしばしば有り、50歳以上の患者さんの場合は切除又は掻き採った内容を病理検査に提出することが必要です。治療法は切除して縫合するのが一般的ですが、鉛の保護板を眼瞼の裏に入れて眼球を放射線から守り、電子線照射することも可能で、手術がいやな場合、高齢者や体調の関係で手術が行いにくい場合や腫瘍が大きくて複雑な形成手術が必要な場合に有用です。
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図1 初期の眼瞼癌(扁平上皮癌)
図2 霰粒腫と誤って頻回に切開された眼瞼癌
図3 図2が放射線(電子線)治療を受けて治癒した状態
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